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ゆりの花粉も猫には危険?致死量と応急処置の方法を紹介

病気  

ヒトに害がなくても、身近にある植物等の中には
猫に中毒を起こすものがあります。

一般的によく知られているものでは、
玉ねぎやチョコレートなどがありますが、
これら以外にも重大な中毒を起こすにも関わらず
あまり知られていないものが存在します。

その代表例として「ゆり」が挙げられます。

ゆりは、不可逆的(元に戻らない)腎不全という
致命的な中毒症状を起こす危険な植物です。

具体的な致死量等は不明ですが、
ゆりの葉、茎、花弁を食べたりだけでなく、
花粉を舐めたり、ゆりの花瓶の水を飲むだけ
同様の中毒を起こす可能性があります。

まだ解明されていないことが多いからこそ
余計に恐いですよね。

今回は、このとっても危険なゆり中毒について
お話します。


ゆりの花粉は猫に危険!ゆりは猫から遠ざけて!

冒頭の通り、ゆりは重大な中毒を起こすとともに
その中毒は花などを食べるだけでなく、
花粉でも起きてしまいます。

ここから、ゆり中毒について詳しくお話します。

1.花粉でも猫は中毒症状を起こす!

繰り返しですが、ゆり中毒は花粉でも起きます。

ゆり中毒は、専門的用語でいうと、
「不可逆的腎尿細管壊死」を引き起こします。

簡単に言うと、腎臓の中の尿細管という組織が
破壊されて、もう再生できないということです。

尿細管が壊死すると、腎臓は尿を作れないので、
腎臓の機能(不要物を尿として体外に排出)
を果たせなくなり(急性腎不全)、
体内に不要な物≒毒素が蓄積するため(尿毒症)
最終的に死に至ります。

一命を取り留めても、
一度破壊された尿細管は復活しないため、
程度の差はあれ、腎機能障害は残ってしまいます

最初の症状は、元気食欲の低下、嘔吐などですが
数日経ってから症状が出ることもあります。

ゆりのどの成分が影響するのかは不明ですが、
全てのユリ科の植物で起こると考えらており、
中でもテッポウユリ、オニユリ、コオニユリ、
鹿の子百合、キスゲは猛毒と言われています。

花や茎などを食べて起こるだけでも恐いですが、
花粉は、肉眼では見にくく、すぐ拡散するため、
一層恐い存在です。

2.花粉による致死量は個体差によるが少量でも死に至る可能性

どの程度の量が危険かは、個体差が大きいため、
一概には言えませんが、
花粉や花瓶の水だけで起こると言われているので
かなりの微量でも起こると考えておくべきです。


猫がゆりの花粉を舐めてしまったときの応急処置方法

こんなに恐ろしいゆり中毒。
万一の場合はどうしたらいいのでしょう?

残念ながら有効な解毒剤はないですので、
迅速な対処が必要です。

お家でできる緊急処置はありません。

さらに摂取することを避け、現状を把握したら
できるだけ早く動物病院にて処置を受けることが
生死をわけるかもしれません。

1.猫をゆりから遠ざける

更に摂取することを避けるために、
ゆりから猫を遠ざけてください。

近くに花粉が飛散している可能性があるので、
猫を移動させた方がいいかもしれません。

2.中毒症状が出ていないか観察

初期の症状は、嘔吐や元気食欲の低下です。

周りに吐いた跡がないか、様子がおかしくないか
よく見てください。

ただし、症状がないからといって、
安心というわけではありません。

数日後に症状が出てくることもありますし、
初期の腎不全では、外見上は普通の場合も
多くあります。

現在の状態を把握することは大切ですが、
経過観察をすることはお勧めしません。

3.猫の身体に花粉が付いている可能性があるので洗い流すか濡れたタオルで拭く

花粉は見えにくいので、身体に付着したままで、
毛繕いをして更に摂取する可能性があります。

確実なのは洗い流すことですが、
普段シャンプーになれていない猫を濡らすことは
かなり難しいですし、
乾燥等まで相当の時間がかかるかもしれません。

その分、処置が遅れることになりますので、
その子の性格等を考慮して迅速にできる方法で
対応してあげてください。

4.症状が出ていなくても動物病院へ連絡し指示を仰ぐ

前述のとおり、症状がでていなくても
安心ではありません。

有効な解毒剤等もありませんので、
食べてすぐなら吐かせたり、輸液などをして
できるだけ早く体から有毒成分を排出させて
障害を受ける腎細胞を最小限に留めることが
重要になります。

実際にゆりを食べた猫を診察した時は、
今は何も変わりない子でも、救ってあげられない
可能性が十分あることをご説明しています。

今はまだ腎臓の破壊が進んでいなくても、
数日後にピークになる可能性があるからです。

腎臓は70%程度機能を失っても血液検査上、
異常はでませんし、普通に生活していけます。

障害を受けた腎臓を元には戻せませんし、
障害の進行を確実に止めることはできませんが、
対症療法を行うことで、障害が起こる程度を
軽減することができます。

確実に助けてあげられる病気ではないだけに、
できるだけ早く対処を始めることが、
より多く腎機能を残すことに繋がります。

まとめ

  • ゆり中毒は致死的に腎臓を障害
  • 花粉や花瓶の水など微量でも危険
  • 障害を受けた腎臓は再生しない
  • 障害の程度を最小限に留めることが重要
  • すぐは無症状のことも…
    →食べたらすぐに動物病院へ

ゆり中毒は、確実には救えない病気です。

唯一の予防は、ゆりを猫に近づけないことです。

万一摂取した場合は、更なる摂取を防ぐとともに
腎臓の障害を最小限に留めるために、
無症状でも早めに動物病院にいきましょう。


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辺銀 歩

関西の動物病院で獣医師として働いています。動物の病気等に関する専門的知識だけでなく雑学的な知識も併せてご紹介していければ...と思っています。
日々の仕事の中で、「知らなかった」ことから不幸を感じてしまう動物や飼い主さんの姿を数多く見てきた経験から、読んで頂いた方々が、動物に関する正確な知識を得ることで、後悔することない人生を送ることができることを目指しています。
「一つの答え」ではなく、動物と飼い主さんのライフスタイルに応じた「選択肢」をご提案していきたいです。

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